現実は「水槽の脳」が見せる仮想現実?証明できる?否定意見も合わせてご紹介

人間の皮膚には数多くの触覚センサーが存在しています。それらが受ける刺激をコンピュータでシミュレーションすることで、触覚を再現可能とするシステムが近年開発されつつあるのです。研究を進めるにつれて、受ける刺激の詳細を完全再現せずとも、人間の知覚は錯覚を生じることが判明しています。

慶応義塾大学の准教授である南澤孝太氏は、体験した触覚を記録し、再現することで他者と体験の共有が可能となる触覚伝送技術の開発によって、やがては触覚を疑似体験できるテレビやインターネットが普及するだろうと語っています。

そもそも錯覚はなぜ起きるのか

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なぜ人間の脳は錯覚を引き起こすのでしょう。これは、なぜ人間の脳は欺かれるのかと換言することもできます。結論から言えば、脳が基本的に面倒くさがりだからです。たとえば先ほど挙げたクロスモーダル現象ですが、これはそれまで送ってきた生活の中で受容した情報と刺激をもとにして生じる錯覚です。

では、なぜそれが起きるのでしょう。それは経験則に基づいて判断した方が、情報処理の負荷が少なくて済むからです。経験則と言えば響きは良いですが、それは同時に「思い込み」とも言い換えられます。心理学ではこれを「バイアス」と呼び、昨今はビジネスシーンにおいても重宝されるワードとなりました。

ベクション現象とは?

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SF作品でよくあるワープシーンを思い出してください。光の粒子が中心から周辺へ向かって拡散している映像を見ると、まるで自分が中心に向けて進んでいるような感覚に陥るのではないでしょうか。これがベクション現象です。つまり、実際には止まっているにもかかわらず、視覚情報の変化によって動いているような感覚を覚えてしまうのです。

より身近な例を挙げましょう。あなたが止まっている電車に乗っているとして、窓から動き出した別の電車を目にしたとき、自分の乗っている電車があたかも動き出したように感じられた経験はありませんか。これは「トレイン・イリュージョン」と呼ばれる実例です。

脳が欺かれて良いこともある

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ベクション現象は、多くの映画作品の中で有効活用されています。アクション映画ともなれば尚のこと、ベクション現象を利用したシーンが全くない映画を挙げることの方が困難といえるでしょう。この錯覚が存在しているからこそ、私たちはUSJで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「スパイダーマン」の世界に没入できるのです。

「水槽の脳」以外の思考実験

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先に触れたように、哲学者たちが考えを巡らせている思考実験は「水槽の脳」だけではありません。眠れない夜に何度も寝返りを打ちながら「寝よう、寝よう」と言い聞かせるほど、返って眠れなくなるものです。そんな夜こそ、これから紹介する思考実験に思い耽ってみるのはいかがでしょうか。

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