このような点から男性が話した事件の前にぶどう酒に入れたとされる毒物とは違った毒物も存在し、誤った発表によって間違った結果を伝えてしまっていたことが分かりました。。ではその入れられた他の毒物とはいったい何だったのか、その点について次から見ていきたいと思います。
犯行毒物はニッカリンTではない
その後7回目となる裁判の中で、弁護士たちによって申請されていた毒物の鑑定結果の提出が行われました。それによると今回ニッカリン以外に見つかった毒物はトリピロと呼ばれる農薬の一種であることが分かりました。
また、今回の検査の結果、技官が3つ目の反応を誤って話した内容についても言及し、この検査の中で反応が消滅するという事はあり得ないということから技官が話す内容は間違っていたということ、そして男性が持ち込んだとされる毒物の中には今回の毒物は存在していないことを説明しました。
これにより今回事件に用いられた毒物がニッカリンではなく、別の毒物である事を証明して見せた弁護士たちは再審を訴え出たものの、検察側の異議を飲んだ裁判所によって裁判が再び行われることを取り消されてしまったのです。
物証の王冠には物証能力がない
そしてそのほかの証拠の中にも、効力足りえないものは複数存在し、この点でも裁判所が肩入れをしていると噂されている原因でもあります。そのうちの一つである採取されたぶどう酒の蓋部分である王冠についても、怪しい点が数多く見て取れます。
まず見つかった王冠についても偽装されていた可能性が指摘されており、男性がぶどう酒を開ける前に何者かがあらかじめ瓶の蓋の王冠に穴をあけて毒を入れ、その後王冠に糊付けをして蓋をし、あたかも男性が毒を入れたかのように見せかけたとも推察されているのです。
このようにして多くの不審な点、また誤った点が数多くあることからも男性が警察に強要されて自白をしてしまった可能性は十分に考えられ、また警察に対して裁判の際に何かしらの肩入れをした可能性も非常に高くなる分析結果となったのです。
10度の再審が1度も採用されていない
こうして裁判内で事件の不審な点やそもそも毒物が全く違ったものだという事が判明したものの、その後裁判が進展することは在りませんでした。弁護士たちが何度も裁判の要求をしたものの、そのすべてを裁判所は却下したのです。
全て合わせて10回もの裁判の請求をこれだけの無実に足る証拠があるにもかかわらず却下するというのは非常に不思議な点です。この事からも裁判所が警察の証拠の過失などに対して贔屓目の判決をしていた可能性は高いように推察されます。
名張毒ぶどう酒事件の真相や真犯人は?
ここまでこの事件内で判明した数々の不審な点や間違っていた部分を紹介し、逮捕された男性が無罪なのではないかという点について見ていきました。ではその場合本当の犯人は一体誰なのか、推察の域ではありますがこの点について見ていきたいと思います。
会長の奥西樽雄が真犯人説
では本当の犯人は誰なのかという点ですが、これは男性の暮らしていた村の責任者でもあった奥西樽雄という人物が犯人なのではないかと言われています。事件を行う動機に関しても村の中に浮気の関係があったために動機としては十分に考えられます。
また、これ以外にも殺された被害者の中にこの男性の妻と浮気の関係のあった女性も殺害されており、ぶどう酒を運び込むのを頼んだのもこの会長だとされています。その為この人物も十分に毒物を入れられる人物だと噂されているのです。
奥西の犯行動機に矛盾がある
この人物が真犯人ではないかと言われていることには他にも理由があり、何よりも今回逮捕された男性にはその事件の動機について矛盾している点が非常に多いのです。そもそも男性は犯行の前に妻に対してお酒をあまり飲むなと話しています。
これから殺人を起こそうとしている相手に対して毒物を入れたお酒を飲むなと前もって言うというのは動機に関して矛盾しているように思えます。この点でも男性がこの事件を起こしたとは考えにくい点として考えられています。
更にこれ以外にも男性はこの事件の前にコンドームを購入しているという情報があります。もし奥さんと浮気相手を同時に殺す予定ならば、これを購入する必要はありません。この点でも犯行前に行うのには不審な点だとして真犯人説に拍車をかけている一因となっています。
名張毒ぶどう酒事件で村八分になった家族
ここまでこの事件内で実は逮捕された男性以外に本当の犯人がいたのではないのかといった内容について見ていきましたが、ここからはこの事件によって逮捕された男性の家族が村でどのような扱いを受けるようになったのか、その点について紹介します。
逮捕当初は奥西家のサポート
この村で引き起こされた毒物による食中毒事件によって逮捕された男性の家族について、最初は村に住む人たち全員でその家族たちを助けていこうといった形でまとまっていたようです。呼びかけなども行うなどその活動は精力的だったことが伺えます。
ここまでならばよかったのですが、逮捕後に男性が犯行内容について否定を行い始めると村の人たちの態度は一変し、打って変わって男性の家族を責め立てるようになりました。俗にいう村人による個人に対しての制裁の意味を込めた行為である村八分を行い始めたのです。
奥西勝が否認すると態度は一転し迫害や差別が始まる
このように最初のうちは村の人々が一体となって男性の家族たちを助けていたものの、男性の犯行の否定を皮切りに手のひらを返して村八分を行うようになりました。そしてこうした行為によって家族はこの村を出ることを余儀なくされてしまったのです。
そうした後村から別の街に引っ越すこととなった家族たちの住んでいた家は、これをきっかけに村の人たち全員で共有していた墓地から追い出され、畑にある一角に設置されるようになるなど村での存在自体を消したいと思えるような状況でした。
こういった唐突ともいえる村人による迫害行為ですが、これは村で起きた真実が明るみになることを恐れたといった事の裏返しなのではないかと考えられます。もし犯人が男性でなかった場合、村全体の結束に影響が出てしまうと考えたうえでの村八分だったのではないでしょうか。
事件が起きたこの村は総人口を合わせても数百人規模の非常に規模の小さな村です。その為村にどのようなことであれ厄介ごとを持ち込むことを極端に嫌ってのことだということが伺えます。この事からもこの村で最も権力を持っていたとされる会長が犯人だという説が流れるのも、頷けるでしょう。
名張毒ぶどう酒事件を題材にした映画や映像作品
このようにこの事件は村という閉鎖的な空間の中で起きた毒物を用いての多くの被害者を出した殺人事件であること、そして実は真犯人がいたのではないかといった説が浮上したことや裁判での証拠の誤った内容や裁判所の不審な動きなど様々な要因によって非常に話題になった事件でもあります。
そしてこういった話題性の高い事件であることから、この事件をモデルにした様々な映像関係の作品が生み出されていきました。ではここではこの事件の内容をモデルにしたと考えられる映像作品について、その内容などについて紹介していこうと思います。
裁きの重み 名張毒ブドウ酒事件の半世紀
まず紹介するこの事件をモデルとして2006年に作られたドキュメント形式で送られる映像作品です。これは男性の第7回目までの裁判が開始されるまでの内容を描いたものとなっており、ここからこの事件が世間に浸透し始めました。
その後この事件について週刊誌などでその詳細が取り上げられるようになり、この際に取り上げられた内容は事件の物的な証拠などについてや事件の矛盾点といった部分を検証するといった内容となっていました。
このようにこの事件はメディアにのせて世間に知られていくようになっていきました。そしてこの事件がさらにその注目度を浴びたのは、次に紹介する事件をモデルとして制作された映画によるものだとされています。